水彩画家東富有 新緑を描く ハサ木
新緑の爽やかさを感じる。黄緑や緑の点のタッチが、新芽の芽吹きを表現し、木の一年の始まりを彷彿させる。画家の老熟な筆使いから表現されるハサ木は、上へと伸びる力強さがあり、まさに自然と対話したこの100分の中に、画家の感じた感動や意思が込められ、私たちは画家と同じ現場にいるように感じるであろう。
現場で写生をする東富有(父)
100分間全集中で制作をする。大自然に体を委ね、流れるように空・木・田んぼを描いていく。道具は筆1本と6色の絵の具だけである。
空の色調のポイントは黄色である。湿画法で空を描くときに、青に黄色を混ぜるとグラデーションによって、緑になる。青から緑、黄色へのグラデーションがとても美しい。
空が乾かないうちに、葉を点のタッチで描いていく。湿画法によって打った点がぼかされ、味わいが出てくる。
遠くの民家や森を軽快なタッチで描いていく。遠景であるため、描き込まないことがポイントである。
ハサ木は下から上へと描く。木が生える方向や、お互いの木の距離感など、自然になるよう注意して描きたい。
手前から奥にかけて遠近感が出るように、木の高さや太さに注意して描きたい。
田んぼに映る木の反射を、湿画法によって表現する。しっかり反射を表現できるよう、上と下の関係性に注意する。
草に明暗を付け、メリハリを付ける。
去年9月の「越後七浦海岸写生」ぶりに父と写生に出かけた。一緒に写生をしようと意気込み、道具まで準備したが、父の写生過程を最初から最後までを見ないともったいないと強く感じた。写生の100分間はあっという間に過ぎ、日陰が変わっても気づかないくらいであった。これからも父との写生記録を多く残していきたい。
『新緑』10号 作品:東富有 / 文・解説:東有達