AZUMAs式デッサン「マチルダ」講師:東俊達
まず初めに、AZUMAs式デッサンとは日本だけではなく海外のデッサン知識や歴史的で伝統的な描き方を取り入れたデッサンです。特徴としては正確に上品に丁寧に完成させます。表面的で曖昧なデッサンを指導するのではなく、本質的で本格的なデッサンを理論的な学問として指導しています。本質的で本格的なデッサンとは線だけでデッサンを捉えるのではなく、面で対象物を捉えて描きます。
形が80%になったら重点を軽く描き始めていきます。この時でもやはり線は薄さをキープします。ここでよくある皆さんのミスは重点でないほうれい線やシワをいきなり描いていることです。この段階になると少し描いていて楽しくなってきます。
絵を描く時に一番大切なことは何を表現したいかです。それが決まらないと目標がなくただただ写すという作業になってしまいます。今回はマチルダの目が力強いので目を中心的に描いていきます。
この時点で形が90%完成しています。少しずつ濃いところを濃くしていきます。ただここで絵を描く上で大切な”少ない筆数で多くを表現する”ということを忘れてはいけません。例えば、髪の毛は全て真っ黒ですが実は顔に近いところだけ暗くすれば髪の毛が黒いことを表現できます。もしここで髪の毛をしっかり全部塗ったならば無駄な動きになるでしょう。この作品は結構速いペースで完成させています。手の動きが速いのではなく無駄な動きをしていないので早く完成できています。いい絵は体力で勝負するのではなく頭力で勝負すべきです。
いきなり形を100%にするのは困難です。また人の顔は少し形が違うだけでだいぶ印象が変わります。だからとても繊細に描かないといけません。ここで100%に形をしていきたいのでじっくり形を観察します。ここでの観察力は筋トレのように訓練する必要があります。デッサンが上手い人とまだ上手くなりたての人の差は才能ではなく筋トレのように培った観察力です。
デッサンは最初は結構勢いよく描けますが、後半になるとより慎重にゆっくり描くべきです。この時点までくると一般の人から見ると最後の完成作品とあまり差がないように見えると思います。こう考えると大切なのはやはりいきなり細かいところを見て描くのではなく、全体を見て描くことです。
この作品は完成状態です。よく言いますが絵は永遠に描けます。どこの出口で絵を完成させるか、いつ絵を完成させるかは入り口が大切です。入り口に入る時点でどのような作品を描くかを決める必要があります。また、作品は実と虚が大切です。その作品がうるさくならないようにお互いが調和し合う必要があります。
今回は、顔を絵を見る人に視覚誘導したいので重点的に描き、背景を描くことで肌を白く見せています。首や後ろの髪の方は虚としてぼやっと描いています。
最後に
この描き方の手順を見ていきなり同じように描けるかと言ったら難しいと思います。そのために皆さんは普段から絵画教室に来て先生のアドバイスをよく聞いてください。絵は筋トレのようなものなのでしばらく描かないと忘れてしまいます。継続的な努力で上達していきます。 絵の楽しさはどこにあるかと聞かれると、描いている時もそうですが、絵画芸術について悟る時が僕は一番楽しいです。よく言いますが芸術には限界がなくとても深いです。この世界に本当に踏み込めた人だけがわかる世界があると思います。その世界は皆さんが想像している以上に皆さんを興奮させ、わくわくさせてくれることと思います。( 文/ 絵:東俊達)